「あなたを愛しているから、そう言うんだよ」。この一言が、ある人には気遣いに聞こえ、別の人には牢屋の最初の壁になることがあります。韓国の研究では、デートDVの加害者が最も多く行っていたのは、殴ることや怒鳴ることではありませんでした。誰と会うかを確認し、服装に口を出し、連絡を強いる――そんな支配でした。
デートDVで最も多い加害行動は、暴力ではなく「支配」
韓国刑事・法務政策研究院の学術誌『刑事政策研究』に掲載されたHong Young-oh(2017)の論文「成人のデート暴力加害要因」は、19歳以上の男性を対象にデートDVの加害経験を調べました。
行動を支配行動、心理的・情緒的暴力、身体的暴力、性的嫌がらせ、性暴力、傷害に分けて分析した結果、支配行動が71.7%で突出して高く、性的嫌がらせ37.9%、心理的・情緒的暴力36.6%、身体的暴力22.4%、性暴力17.5%、傷害8.7%の順でした。
つまり、デートDVを行った人の多くは、最初から手を上げていたわけではありません。「誰といたの」「その服はなぜ着るの」「どうして電話に出ないの」と言って、相手の日常を細かく監視します。支配は暴力の付け足しではなく、最も多く、早く現れる中心的な行動だったのです。
なぜ支配を愛情だと思ってしまうのか――強圧的支配の理論
米国の社会学者Evan Starkは著書『Coercive Control: How Men Entrap Women in Personal Life』(2007)で、親密な関係の暴力を「自由を奪う犯罪」と捉え直しました。
強圧的支配(coercive control)の理論では、加害者は暴力の前に、外出の許可を求めさせ、友人と会わせず、服装をチェックすることで、相手の自律性を少しずつ奪います。この考え方は、その後イギリスとスコットランドで「強圧的・支配的行為」を独立した犯罪として定める立法にもつながりました。
難しいのは、その支配が「心配だから」「守りたいから」という関心や愛情の言葉で包まれやすいことです。そう言われると、嫌だと感じる側が自分をわがままに思ってしまうことがあります。怒ると、こちらが利己的な人のように感じさせられる。その仕組みが、支配を愛情と誤認させます。
ガスライティングの例――こんな言葉を繰り返し聞いていませんか
ガスライティングとは、相手の記憶、判断、感情を繰り返し否定し、自分の現実認識まで疑わせる心理的な操作を指します。社会学者Paige Sweetは「The Sociology of Gaslighting」(2019)で、これを個人の性格の問題ではなく、ジェンダーの権力不均衡に根ざす社会現象として説明しました。加害者が性別役割の固定観念や構造的な不平等を利用し、相手の現実感覚を揺さぶるという指摘です。
恋人関係では、次のような言葉として現れることがあります。
- 「心配して言っているだけ」――監視や支配を気遣いに見せる
- 「そんなこと、君は言っていない」――記憶を否定して自分への信頼を崩す
- 「気にしすぎだよ」――感情を過敏な反応として小さく扱う
- 「みんな普通にやっている」――不当な要求を当たり前のことにする
- 「君のせいで怒ったんだ」――責任を相手に押しつける
こうした言葉が一度や二度ではなく繰り返されると、人は自分の感覚より相手の言葉を信じるようになります。単発のうそではなく、反復によって自己信頼を壊すパターンであることが、ガスライティングの核心です。
服装に口を出されるとき、軽く流さないで
「その服はちょっとどうなの?」「メイクはもっと薄くして」「その服で出かけると心配なんだ」。服装への干渉は、先ほどの71.7%という支配行動の代表的な形の一つです。
その場では大したことがないように思えても、服の前で長く迷うようになったなら、単なる好みの違いとは言い切れません。自分の身体と行動の決定権を、少しずつ相手に渡しているサインかもしれません。一回の指摘は小さく見えても、重なると「この人が嫌がる服は着ないでおこう」という自己検閲になります。
デートDVの前兆チェック
次の項目が3つ以上当てはまるなら、いまの関係を一歩引いて見直してみてください。これは診断ではなく、自分を振り返るための目安です。
- 返信が遅いと怒ったり、居場所を詳しく聞いたりする
- 誰といたかを毎回報告させられる
- 服装、メイク、髪型に頻繁に口を出される
- 友人や家族と会うことを快く思わず、遠回しに妨げる
- SNSやスマホを勝手に確認する、パスワードを求める
- けんかの後は、いつも自分が悪いという結論になる
- 別れを切り出すと、脅したり極端な反応を見せたりする
- 怒ると物を投げる、壁を叩くなど威圧的な行動をする
複数当てはまっても、それはあなたに問題があるという意味ではありません。支配は相手が選んでいる行動であり、あなたが招いた結果ではありません。
自分の感覚を取り戻すために
ガスライティングの怖さは、受けている人が自分自身を疑うようになることです。だから回復の第一歩も、自分の感覚を取り戻すことから始まります。
記録する。 けんかがあった日、状況、相手の言葉を短くでもメモしておきましょう。後から「そんなこと言っていない」と言われたとき、自分の記憶を守る手がかりになります。
第三者に話す。 信頼できる友人や家族に、起きたことをそのまま伝えてみてください。関係の外からの視点が、内側では見えなかったパターンを示してくれます。
感情に名前をつける。 「この人といると、なぜこんなに不安なのだろう」「なぜいつも顔色をうかがってしまうのだろう」と自分に問いかけてください。その違和感は根拠のない敏感さではなく、心身からのサインかもしれません。
健全な境界線は、どこから整える?
境界線は相手を遠ざけるためではありません。関係を安全に、続けられるものにするための最低限の線です。
- 連絡の頻度や時間について自分の基準を決め、言葉で伝えてみる。
- 「心配だから」の後に支配的な要求が続くときは、その要求が妥当かをもう一度考える。
- 相手の反応が怖くて言葉を飲み込んでいるなら、それ自体が危険信号かもしれない。
- 境界線を伝えても尊重されず、怒りや罪悪感で押し返されるなら、関係の構造そのものを見直す必要がある。
身体的な危険を感じる、すでに暴力を受けたという場合は、一人で判断せず専門機関へ相談してください。日本ではDV相談ナビ(#8008)が相談窓口につながります。差し迫った危険があるときは110番を利用してください。韓国にいる場合は女性緊急電話1366が24時間の相談と連携を提供しています。
今日、覚えておきたいこと
愛情という名前で、あなたの行動、交友関係、服装、人間関係を支配しようとする人は、あなたを愛しているのではなく、支配しようとしています。そしてそれは、決してあなたのせいではありません。
今日の会話やけんかで引っかかった場面があれば、日付、状況、相手の言葉を今すぐメモに残してください。その記録が、自分の感覚を守る最初の証拠になります。
参考研究
- 홍영오 (2017). 성인의 데이트폭력 가해요인. 형사정책연구, 28(2), 321-353. 한국형사법무정책연구원.
- Stark, E. (2007). Coercive Control: How Men Entrap Women in Personal Life. Oxford University Press.
- Sweet, P. L. (2019). The Sociology of Gaslighting. American Sociological Review, 84(5), 851-875.