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就活中の推し活に罪悪感があるのはなぜ?現実逃避か息抜きかを見分ける方法

就活中の推し活に罪悪感がわくのは、休む時間に境目がないからです。自分で選んで始めた推し活は回復になり、やるべきことから逃げて押し出されるように始めた推し活は先延ばしになりやすいんです。

要点:就活中に推し活をすると罪悪感があるのはなぜ?現実逃避と息抜きはどう違う?

  • 就活中は仕事と休みの境目がないので、何をしていても「今こんなことしてる場合じゃない」という気持ちがついてきやすくなります。推し活が特別に悪いから罪悪感がわくわけではありません。
  • Sonnentag・Fritz(2007)が整理した「回復経験」は、仕事から離れる、緊張をほどく、新しいことを身につける、自分で選ぶ、の4つです。推し活はこの4つをすべて満たせます。
  • ところが、休む時間を「やるべきことを先延ばしにした」と感じて罪悪感を持つと、回復した感覚も弱くなるという研究(Reinecke ほか、2014)があります。疲れている人ほど休みを先延ばしと受け取りやすい、というのが落とし穴なんです。
  • やるべきことがしんどくて、まず気分をなだめようと推し活に逃げるなら、Sirois・Pychyl(2013)が言う先延ばしに近くなります。「自分で選んで始めたか、押し出されるように始めたか」がいちばん簡単な見分け方です。
  • 推し活を減らそうと決意するより、1日の中に決まった枠をつくるほうが守りやすく、「サボった時間」というレッテルも貼られにくくなります。

たとえば、エントリーシートの締め切りまであと3日という午後4時を想像してみてください。パソコンには1段落目だけ書いたファイルが開いていて、隣のタブには昨夜アップされた推しの新曲ステージのチッケム(個人カメラ映像)。「1本だけ見たら書こう」と思っていたのに、気づけば6時です。画面の中の推しは相変わらずキラキラしているのに、心はひやっとしますよね。友だちのグループLINEには「今日SPI2つ解いた」というメッセージが届いていたりして。

就活生が集まる掲示板に「就活中に推し活してもいいですか?」という投稿がくり返し上がっているのを見ると、このひやっとする感じはかなり多くの人が知っているもののようです。ただ、この問いには「いい」「だめ」よりも、「どんな推し活か」で答えるほうが正確です。同じ2時間が、息抜きにもなれば現実逃避にもなるからです。

就活中は、休むことにも許可がいる気がする

会社員には「退勤」という線があります。6時を過ぎればドラマを見ていても誰も何も言いません。就活生にはその線がないんですよね。1日24時間がまるごと「準備に使えたはずの時間」になるので、何をしていても、その時間に勉強しなかったという計算がついて回ります。

McKee-Ryan ら(2005)は、失業とメンタルヘルスに関する研究100件あまりをまとめて分析しました。仕事のない人は働いている人より心理的な健康度が全体的に低く、再び仕事が見つかると回復する傾向がありました。この分析はおもに、働いていて職を失った人を対象にしているので、新卒で初めての就職を目指す人と同じとは言えません。それでも、所属先がなく、1日のスケジュールを自分で組まなければならないという点は似ています。

推し活にはさらにもうひとつ、目に見えやすいという特徴があります。推し活用アカウントに上げた動画、グッズの写真、夜遅くまで開きっぱなしの配信アプリ。ほかの人が資格やインターンで実績を積み上げているのが見えるのと同じように、自分の推し活も全部見えてしまうので、「あの子、そんなことしてる余裕あるんだ」という声を、言われる前に自分で思い浮かべてしまうんです。

しかも就活は結果が出るのが遅いものです。エントリーしてから結果が来るまで何週間もかかり、そのあいだは自分がうまくやれているのか知る方法がありません。一方、推し活はごほうびがすぐに届きます。新しい写真、新しいステージ、新しい供給が毎日のように。結果が見えないことと、すぐに楽しいことが並んでいれば、楽しいほうに使った時間がやけに大きく見えてしまうのは自然なことです。

推し活が「回復」になる条件(回復経験の4要素)

では、休む時間はどう過ごせば本当に回復につながるのでしょうか。Sonnentag・Fritz(2007)は、働く人が仕事から回復する経験を4つに分け、それを測るアンケートをつくりました。

  • 心理的距離:体だけでなく、頭も仕事から離れている状態
  • リラックス:緊張がほどけて、心と体がゆるむ経験
  • 熟達:新しいことを学んだり、ほどよく難しいことをやりとげたりする経験
  • コントロール:何を、いつ、どうやるかを自分で決めている感覚

この4つを多く経験している人ほど、疲れが少なく気分もいい傾向がありました。推し活に当てはめてみると、思った以上にぴったりです。ステージを見ているあいだ面接の心配が消えているなら心理的距離がとれていますし、好きな曲を流して横になっているのはリラックスです。コールを覚えたり、海外のインタビューを訳したり、動画を編集したりするのは熟達に近いですね。そして、今日は何を見るか自分で選べること自体がコントロールです。

限界もあります。この尺度は会社員を対象につくられたもので、就活生にそのまま当てはめた研究はまだ多くありません。それでも、「休みが回復になるには何が満たされていればいいか」を考えるときの目安としては使えます。回復のためのルーティンをもっと広く組み立てたいなら、バーンアウトからの回復ルーティンも参考にしてみてください。

罪悪感があると、休んでも休まらない

ここで、ちょっと理不尽に感じる研究をひとつ紹介します。Reinecke・Hartmann・Eden(2014)は471人に、1日を終えたあとにテレビを見たりゲームをしたりした経験について聞きました。その日すでに疲れていた人ほど、その時間を「やるべきことを先延ばしにした」と受け取る傾向があり、そう受け取ると罪悪感が強くなりました。罪悪感が強いほど、同じ時間を過ごしても回復した感覚は少なかったんです。

まとめると、回復がいちばん必要な人ほど、休み時間からいちばん得られるものが少ないという構図です。1回のアンケートで見た結果なので因果関係までは言い切れませんが、就活生が推しの動画を見ながら「こんなことしてちゃだめなのに」をくり返している姿と重なって見えますよね。推し活そのものより、推し活をしながら自分を責めている時間のほうが、回復を削っているのかもしれません。

だからといって、推し活をきっぱりやめればいいわけでもありません。休む時間は変わらず必要ですし、罪悪感はほかのことに移っていくだけになりがちだからです。

推し活が現実逃避になるとき(先延ばし)

とはいえ、すべての推し活が回復になるわけではありません。Sirois・Pychyl(2013)は先延ばしを、怠けではなく「今の気分を先に立て直そうとする選択」として説明しています。やるべきことが不安だったり、どこから手をつけていいかわからないものだったりすると、そのいやな気分をすぐに消せるほうを先に選び、そのツケを未来の自分に回してしまう、ということです。

この説明を裏づける実験もあります。Tice・Bratslavsky・Baumeister(2001)は、参加者の気分を落ちこませたあと、お菓子を食べたり試験の準備を後回しにしたりできる機会をつくりました。気分が落ちている人ほどたくさん食べ、たくさん先延ばしにしましたが、「今の気分はどうせ変わらない」と思わせた条件では、その差が消えました。気分を変えたいという目的があるときだけ、誘惑に負けていたということです。

就活に当てはめるとこうなります。ESの書き出しが浮かばなくて行きづまる、その行きづまった感じがいやだ、だから推しの動画を開く。このとき推し活は気分をなだめてくれますが、ESはそのまま残っていて、戻ってきたときには時間まで減っています。書き出しを完璧にしたくてなかなか手をつけられないタイプなら、完璧主義の人が先延ばしをしてしまう理由のほうが近いかもしれません。

現実逃避か息抜きかを見分ける3つの質問

推し活を終えたあと、あるいは始める直前に、自分に聞いてみてください。正解を当てるための質問ではなく、今日の自分の状態を確かめるためのものです。スマホのメモに3行で書いておいて1週間ほどチェックしてみると、パターンが見えてきます。

  1. 自分で選んで始めた?それとも押し出されるように始めた?「今夜はステージを見よう」と決めていたなら選んだことになりますし、やるべきことを前に手が止まってタブを開いたなら押し出されたほうです。
  2. 終わったあと、少し軽くなった?それとも重くなった?軽くなったなら回復寄り、やるべきことがもっと大きく見えるなら現実逃避寄りです。
  3. 見ているあいだ、就活の心配は本当に消えていた?画面には推しがいるのに頭の中はずっとESだったなら、距離もリラックスもとれていないので、休めたとは言いにくいです。

落とし穴がひとつあります。同じ人、同じ推し活でも、日によって答えは変わります。昨日は回復だった2時間が今日は現実逃避かもしれないので、「私は推し活するとだめになる」のような結論でひとまとめにしないほうがいいです。

たとえば月曜日は求人情報の整理を終えてから、夜にバラエティのクリップを見てすっきりしたなら回復です。木曜日は面接対策が手につかなくて午後じゅうファンアカウントのタイムラインをスクロールし、夜にはもっと不安になっていたなら現実逃避ですよね。どちらも推し活ですが、違ったのは始めた理由と終わったあとの気分です。現実逃避の日が何日か続いたら、推し活を責める前に、その週に特に手をつけにくかったことは何だったのかを書き出してみてください。

2つ目の質問で「軽くも重くもならない、ただ何も感じない」という答えが続くなら、話は少し違ってきます。ここに書いたことは診断ではありませんが、推し活をしても楽しくない、好きだったものに何も感じない、睡眠や食事が大きく乱れている、という状態が2週間以上続いているなら、休み方の問題ではないかもしれません。心療内科や精神保健福祉センターなど、専門家に相談してみることをおすすめします。気持ちがとてもつらいときは、「よりそいホットライン」(0120-279-338、24時間・無料)や「いのちの電話」(0570-783-556)で話を聞いてもらえます。

推し活に、1日の中で決まった枠をつくる

減らそうと決めるより、枠を決めてあげるほうが守りやすいものです。

  • 1日1枠だけ決める:たとえば「夜9時から10時は推し活タイム」とカレンダーに書いておきます。決めておくのはこの1枠だけで十分です。決めた時間の中の推し活は先延ばしではなく予定なので、罪悪感を持つ理由はありません。
  • 気が重いことは、先に25分だけ:ESの1段落目のように取りかかるのが重いことがあるなら、まず25分だけ向き合って、そのあと動画を1本見ます。順番を入れ替えるだけで、「押し出されて始めた」推し活が「自分で選んで始めた」推し活に変わります。
  • カムバやライブの週は先に予定に入れておく:その週は勉強の計画を少し軽めにしておけば、崩れた週ではなく、もともとそういう週になります。
  • 熟達タイプの推し活をひとつ混ぜる:コールを覚える、歌詞を訳す、動画を編集するなど、何かを身につける推し活は、「今日は何もできなかった」という気持ちをやわらげてくれます。

罪悪感がわいてきたときに心の中で言う一文も、決めておくといいと思います。

「今は休むと決めた時間。明日の朝10時にまたESを開く」

誰かに「就活中なのに推し活する時間あるの?」と聞かれたときの一文もあります。

「これが私の休み時間。そのかわり午前中に求人のチェックは終わらせたよ」

言い訳ではなく事実を言っているだけなので、思ったより縮こまらずにすみます。

1日の例を挙げるとこんな感じです。午前10時から12時は求人のチェックとES、昼食のあと2時から5時はSPIや面接対策、夕食のあとは散歩、9時から10時は推し活、そして11時前にはスマホを置く。時間割は人それぞれですが、推し活の枠が空欄ではなく名前のついた枠になっている、というのがポイントです。

行きづまったときの自分のクセが気になったら

問題は推し活そのものなのか、それとも気の重いことを前にすると手が止まって、気分が楽になるほうへ逃げてしまうクセなのか。わからなくなったら、本当の防衛パターンを知るテストを試してみてください。居心地の悪い場面で、自分がどんなふうに自分を守りがちなのかを見ていくテストです。結果は「あなたは怠け者です」と判定する診断ではありません。次にESの締め切りを前にして別のタブを開きかけたとき、「あ、またこれやってる」と気づくための材料くらいに使ってもらえたらと思います。

今夜9時のチッケム

就活中の推し活につきまとう罪悪感は、推し活が悪いからではなく、休む時間に境目がないから生まれます。推し活は、心理的距離、リラックス、熟達、コントロールのすべてを満たせる立派な回復の手段で、こじれるのはたいてい、やるべきことから逃げるために押し出されるように始めたときです。

だから今日は、推し活を減らす計画より先に、推し活をする時間を決めてみてください。夜9時に再生するチッケムは、午後4時にこっそり開くチッケムと同じ動画でも、少し違って見えるはずです。

参考文献

  • Sonnentag, S., & Fritz, C. (2007). The Recovery Experience Questionnaire: Development and validation of a measure for assessing recuperation and unwinding from work. Journal of Occupational Health Psychology, 12(3), 204–221. https://doi.org/10.1037/1076-8998.12.3.204
  • Reinecke, L., Hartmann, T., & Eden, A. (2014). The guilty couch potato: The role of ego depletion in reducing recovery through media use. Journal of Communication, 64(4), 569–589. https://doi.org/10.1111/jcom.12107
  • Sirois, F., & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127. https://doi.org/10.1111/spc3.12011
  • Tice, D. M., Bratslavsky, E., & Baumeister, R. F. (2001). Emotional distress regulation takes precedence over impulse control: If you feel bad, do it! Journal of Personality and Social Psychology, 80(1), 53–67. https://doi.org/10.1037/0022-3514.80.1.53
  • McKee-Ryan, F., Song, Z., Wanberg, C. R., & Kinicki, A. J. (2005). Psychological and physical well-being during unemployment: A meta-analytic study. Journal of Applied Psychology, 90(1), 53–76. https://doi.org/10.1037/0021-9010.90.1.53
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