一緒にいるのに孤独な理由――ファビングと恋愛満足度の関連
スマホに注意が向く場面を見つけ、責めずに話すヒントを紹介します。
誰かと一緒にいるのにスマホに没頭し、相手を置き去りにする行動を、心理学ではファビング(phubbing)と呼びます。phone(電話)とsnubbing(冷たくあしらうこと)を合わせた言葉です。近年の研究では、恋愛や結婚の満足度の低さと関連する可能性が示されていますが、研究の多くは相関を示すもので、ファビングが満足度低下を直接引き起こすとは断定できません。
カフェの窓際で向かい合う二人を思い浮かべてください。テーブルにはコーヒーが二つと、スマホが二台。一人が今日あったことを話しているのに、もう一人はうなずきながら画面から目を離しません。同じ場所にいるのに、なぜこんなに一人ぼっちに感じるのでしょう。見覚えのある場面かもしれません。
ファビングとは? ただスマホを見ることと何が違うのか
ファビングは、単に「スマホをよく見る」ことではありません。核心は、目の前にいる相手よりスマホを優先することです。会話の途中で急に画面を確認する、相手の話に生返事をしながら手はスクロールを続ける。こうした状態が当てはまります。
問題は、これが相手に送る無言のメッセージです。「今はあなたより、この画面のほうが大事」と感じさせるサインが積み重なると、どんなに小さく見えても関係の土台は揺らぎ始めます。
恋人がスマホばかり見る――満足度との関連を調べた研究
このテーマを本格的に学術研究した初期の研究の一つが、米国ベイラー大学のJames A. RobertsとMeredith E. Davidが2016年に国際誌『Computers in Human Behavior』で発表した論文です。二つの調査を行い、一つ目(回答者308人)では人がどの行動を「パートナーに無視された」と感じるのかを調べ、二つ目(回答者145人)では、その行動が関係に与える影響を分析しました。
二つ目の調査では、回答者の46%以上が恋人からファビングを受けた経験があると答えました。経験頻度はスマホ利用をめぐる衝突や関係満足度の低さと関連していました。ただし、自己報告による観察データだけでは、どちらが先に起きたかや因果関係までは分かりません。
スマホの使い方と関係のなかの距離感
「最近、私たち前と違う気がする」。多くの人がこうした感覚を漠然とマンネリと呼びます。しかし、そのだるさの正体は、繰り返されるファビングによる心の距離かもしれません。
トルコの既婚者712人を対象にした2023年の調査では、ファビング傾向が高い人ほど結婚満足度が低いという関連が観察されました。データは一時点で集められており、ファビングが差を引き起こしたとは示せません。
研究チームによれば、人は会話で目を合わせ、十分に聞いてもらい、応答が返ることを期待します。ファビングではその期待が満たされないため、無視された側はネガティブな感情を抱き、相手を無礼で無関心な人と受け取りやすくなります。次のリストで、いまの関係を振り返ってみてください。
会話中に相手が習慣的にスマホを確認する
大事な話をしているのに「ちょっと待って」と先にスマホを見る
一緒に食事をしても、会話より各自の画面を見る時間が長い
「前に言ったよね」と言うと、本当に覚えていないことが多い
デート中なのに、一人でいるような孤独を繰り返し感じる
スマホの使い方と会話:研究が見たもう一つの関係
2023年の研究では、コミュニケーション能力が統計モデル上の媒介要因として示されました。これは測定した変数間の関係を表す結果で、会話能力とファビングの統計的な関連と証明するものではありません。それでも、気になった場面を具体的に伝え、二人でスマホの使い方を決めることは試せます。
目標は、スマホをまったく見ない関係ではありません。ファビングが起きたとき、それをどのように会話にできるかが、関係を守る鍵になります。
デート中のスマホルール――二人で話し合える小さな約束
「気をつけるね」だけでは続きません。具体的なルールが必要です。
食事中はスマホをテーブルではなくバッグにしまう
デートの前に「これから1時間はスマホなしにしよう」と短く約束する
緊急の連絡が来そうな日は、先に「仕事の急ぎの連絡があるかもしれないから、少し確認するね」と伝える
就寝前にスマホを離すルールが合うか試す
小さなルールですが、試してみられる約束の一つですが、誤解をすべて防ぐものではありません。
ファビングへの対処――責めずに寂しさを伝える
ファビングをされてつらいとき、感情が爆発した瞬間に相手を追い詰めるのはよくある反応です。しかし、その会話は防御を招き、問題を解決しにくくします。
避けたい言い方
「あなた、いつもスマホばかり。私といても楽しくないの?」
「もういい。話しても無駄だし、ずっとスマホを見ていれば?」
試したい言い方
「さっき話している間ずっとスマホを見ていたから、私の話は大事じゃないのかなって、少し寂しかった」
「食事のときだけでもスマホを置いて話せたらうれしい。その時間は、ちゃんとあなたと一緒にいたいんだ」
鍵は、「あなたは~する」という非難を、「私は~と感じた」という感情中心の文章に変えることです。相手の人格を攻撃せず、自分の気持ちを正確に伝えると、具体的な場面や気持ちを伝える一つの方法です。引用した調査は、この言い方が相手の反応を改善するかを検証したものではありません。
二人で話し合える小さな約束
ファビングが繰り返されると会話が途切れ、疎外感につながることがあります。ただし、一つの行動だけで関係の満足度や将来を判断することはできません。気になる場面と望む変化を具体的に伝え、二人で続けられるスマホの使い方を決めてみてもよいでしょう。
今日の食事やデートで、一度だけこう言ってみてください。「この時間だけは、スマホを置いて話そう」。二人に合うなら試せる選択肢の一つです。引用研究が効果を保証するものではありません。
参考文献
Roberts, J. A., & David, M. E. (2016). My life has become a major distraction from my cell phone: Partner phubbing and relationship satisfaction among romantic partners. Computers in Human Behavior, 54, 134-141.
Kılıçarslan, S., & Parmaksız, İ. (2023). The mediator role of effective communication skills on the relationship between phubbing tendencies and marriage satisfaction in married individuals. Computers in Human Behavior.
連絡・距離・愛着を考える
全8話中8話- 01 不安型愛着:返信が遅いだけで苦しくなるときの4ステップ
- 02 彼氏の連絡が減ったとき:回避型愛着とほかに考えられる理由
- 03 内向型と回避型の違いは?一人で映画を観るのがいちばん楽な私は回避型愛着なのか
- 04 既読なのに返信がないのはなぜ?相手の気持ちを決めつけない考え方
- 05 恋人のLINEがそっけなくて寂しいとき、「私って気にしすぎ?」と何度も聞きたくなる心理
- 06 一人でいたいのに寂しいのはなぜ?一人の時間とつながりを両立する方法
- 07 愛着傾向とカップルの繰り返す衝突パターン
- 08 一緒にいるのに孤独な理由――ファビングと恋愛満足度の関連